沈金とは、漆芸の数ある加飾技法のひとつ。その歴史は古く江戸時代から日本に伝わる伝統工芸です。点彫り・砂ボチ・線彫り・こすりといった彫り方を使い分け、塗り上がって完成した漆器に専用のノミを当てて文様を彫ります。
道具にもこだわりがあります。作家・職人の命ともいえるノミはそれぞれの自分の手にあった専用のものを自分で研いで形を作ります。沈金師にはノミを研ぐ技術も求められるのです。
THE ROLLING STONESのギタリストであるキース・リチャーズをモデルに、日本の伝統工芸である沈金の技法を用いて表現した作品です。漆、プラチナ紛使用。
2014年の夏、THE ROLLING STONESのファンである友人から「模写をしよう」と誘ってくれた際に送られてきたのが、この作品の元になった一枚の写真でした。ロックを聴かない私は、キースの名前も顔もなにも知らず、ただただこの笑いジワや指の表情に魅せられました。この表情を、「必ず沈金の作品に仕上げたい」と強く思った事をよく覚えています。他の作品を手掛けながら休み休みデッサンをし、いつの間にかデッサンだけで3年という歳月が経っていました。
そしていよいよ本番。漆面にノミを当て彫っていく作業に入るのです。「沈金について」の項目で製作工程を記述しますが、沈金とは失敗の許されない技法です。そのため、十分なデッサンで自分の中にモチーフを取り込み、それからノミを持ち漆面を彫りモチーフを蘇らせたい、そんな気持ちで作業を進めます。みっちりと彫り続け、それはおよそ1年という期間を要しました。果たしていつ彫り上がるのだろうか。。。どれだけの歳月がかかるのだろうか。。。
一番最初の点を彫った時には全く想像もつきませんでしたが、完成予想図は常に頭の中に描かれていたので、ただそこへ到達する事のみを考え彫り続けました。「A MAN」この作品は、キース本人に観てもらえたらこれ以上の喜びはありません。
この作品はもちろんのこと、私の沈金にかける思いをライターの友人にインタビューして頂きました。
こちら(note)からお読みいただけます。長文となりますがご一読いただけると幸いです。
生活工芸品
箸(4,000円~)
名刺入れ(14,000円~)
お椀(19,000円~)
重箱(100,000円~)
※税込み、図案費用を別途申し受けます
現在、輪島塗りの器物が手に入らないため、生活工芸品の販売を見合わせております。
その他、沈金作品のご購入はこちらから
「沈金」と聞いても理解しにくい技術を、実際に目の前で見て納得してください。
実演では、皆さまの目の前でノミを使って漆を彫る作業をお見せするだけでなく、沈金技術の説明や漆器の使い方などをご説明いたします。
出張費用 50,000円~(交通費・宿泊費別途)
※東京都近郊に限ります
※実演内容はご参加される方に応じてご相談を承ります。
机・椅子・電源のある室内で行います。色入れ(金粉等の接着工程)は、金粉が空調の風で舞ってしまうことと、ご参加の方が空気感染で漆カブレになるおそれがあるために映像又は口頭でご説明させて頂きます。ご了承ください。
一、
美濃紙に描いた文様の裏面に透ける線を、胡粉(ごふん:貝殻から作られる白い顔料)でなぞります。漆面に美濃紙を当て刷毛でなでると、文様が漆面に白く転写されます。
二、
塗り上がりが完成した漆器に、専用のノミを当て文様を彫ります。全て彫り上がった後、彫っている部分と彫っていない部分に関わらず漆面全面に漆を塗布します。(漆は塗料であり接着剤でもあります。)
三、
余分な漆をふき取り、塗布した漆の上に金粉(銀粉、プラチナ紛、色粉等)を塗布します。この時、彫っていない部分にも金粉は付着します。
四、
温度・湿度を管理した無風のシメ風呂(室:むろ)に作品を入れ、漆を半乾きにさせます。
五、
漆が半乾きになってから、彫っていない部分の金粉と漆を拭き取ります。漆は油分で分解される性質があるので、少量の油を使い綺麗に拭き上げ、そうすることで彫った部分にのみ金粉が残ります。
六、
再度シメ風呂(室)に作品を入れ、温度・湿度を管理し漆を完全に乾かし完成となります。
「沈金」は「金」が漆器などに彫った溝に「沈む」ということから、そう呼ばれている技法です。言わば完成品に傷をつける作業なので、万が一にでもノミが滑ってミスをしてしまった場合、それは失敗となり作品にはなりません。そして、100年その形状を保つことが出来なければ、伝統工芸とはなりません。
1978年3月生まれ。東京都八王子市出身在住。石川県立輪島漆芸技術研修所卒業。在学中、現人間国宝(重要無形文化財保持者)である前史雄氏に師事。
2008年、八王子ギャルリーモトにて初の個展開催。都内近郊各有名百貨店の和食器売り場にて実演販売を経て現在、自身の作品を制作・販売。
2018年
AZITO BARにて第2回個展「花咲く春にあう」開催
CAFFEE ritmosにてイラスト展「休日の過ごし方」開催
2020年
11/5-10 ギャラリー芙蓉にてグループ展開催
2021年
3/1‐4/10tino/codaにて個展「花ひらく、春」開催
2022年
10/18~31東京メガネ八王子店にて個展「秋澄む日に」~ノミの音色を聴いて〜開催
2024年
3/2(土)~30(土)tino/codaにて沈金師春日友子個展〜春うえざれば…〜開催
2018年
第19回日本・フランス現代美術世界展入選
第51回欧美国際公募フィンランド美術賞展推薦・入選
2019年
第20回記念日本・フランス現代美術世界展入選
2020年
第21回日本・フランス現代美術世界展入選
2021年
第53回欧美国際公募スペイン美術賞展推薦・招待作品出展
第22回日本・フランス現代美術世界展入選
サロン・ドトーヌ2021入選
2022年
パリ国際サロン出展 優秀賞受賞
TOKYO世界巡回展出展
第23回 日本・フランス現代美術世界展出展
サロン・ドトーヌ2022推薦
2023年
パリ国際サロン出展
TOKYO国際展パリ出展 優秀賞受賞
第24回日本・フランス現代美術世界展出展
パリ国際サロン賞受賞
サロン・ドトーヌ2023推薦
2024年
第25回日本フランス現代美術世界展推薦
パリ国際サロン推薦
サロン・ドトーヌ2024推薦
ライターの友人に私の沈金にかける想いをインタビューして頂きました。長文ですがご一読いただければ幸いです。